嚥下補助装置(LAP)の作用効果をビデオで見る


 まず最初に入院中に行ったVF検査を紹介します。これは嚥下機能をチェックするものです。

 この場合は、嚥下補助装置(LAP)を装着しておりません。

(1)手術前・・・正常な嚥下動作を確認したものです

(2)術後21日後の検査・・・嚥下不合格でした(14日後にも行ったけれども不合格でしたので、再検査したものです。)

(3)術後66日後・・・嚥下合格した時の映像です。

 

 次に、4年10ヶ月後に嚥下補助装置(LAP)の効果を調べるために行った実験を紹介します。

 ①装着した場合と装着しない場合(非装着)

 ②造影剤の粘度が標準の場合と高粘度の場合

の2水準2要因を取り上げ、4条件の実験を実施しました。

 造影剤の粘度が標準の場合は、流動食を想定したものです。高粘度の場合は、固形食を想定したものです。

 咀嚼補助装置(LAP)を装着する場合は、同時に舌接触補助床(PAP)も装着しました。

 

手術の前のVF検査(嚥下造影検査)所見

 誤嚥することなく、造影剤をスムーズに飲み込めています。

 画像の中の黒い部分は、義歯に被せた金属の影です。

術後21日後のVF検査所見

 舌根の4分の1を切除しているため、口に含んだ造影剤が勝手に下へ流れています。

 造影剤が気管に流入し誤嚥を起こしています。VF検査不合格です。

術後66日後のVF検査所見

 誤嚥はしていませんが、舌の上に貯留した造影剤は何度嚥下動作を繰り返しても、造影剤を喉頭部に送ることが出来ません。顎を上にあげることで、造影剤を喉頭部に流し込んでいます。VF検査合格です。

術後4年10ヶ月後の実験(ケースⅠ:非装着・標準粘度の場合)

 PAP/LAPを装着せずに、標準粘度の造影剤でVF検査を行いました。流動食の嚥下を想定した実験です。この時点では金属製の義歯は抜歯されていたので、画像には映っていません。

 造影剤は誤嚥することなくスムーズに飲み込めています。しかしかなりの量の造影剤が舌の上に貯留している様子が認められます。

術後4年10ヶ月後の実験(ケースⅡ:非装着・高粘度の場合)

 PAP/LAPを装着せずに、高粘度の造影剤でVF検査を行いました。固形食の嚥下を想定した実験です。

 嚥下動作を何度繰り返しても、造影剤を飲み込むことができませんでした。特に前方(前歯側)での造影剤の貯留が著しく、通常の造影剤との違いが顕著に認められました。

術後4年10ヶ月後の実験(ケースⅢ:装着・標準粘度の場合)

 PAP/LAPを装着し、標準粘度の造影剤でVF検査を行いました。

流動食の嚥下を想定した実験です。

 映像の中に見られる針金状のものは、歯にPAP/LAPを固定するための留め金です。

 ケースⅠと比較すると、造影剤の口腔内貯留が顕著に少なくなっていることが分かります。嚥下補助装置(LAP)の効果が顕著に認められます。

術後4年10ヶ月後の実験(ケースⅣ:装着・高粘度の場合)

 PAP/LAPを装着し、高粘度の造影剤でVF検査を行いました。

固形食の嚥下を想定した実験です。

 この実験により、嚥下補助装置(LAP)の作用効果を次のように説明できます。

 ①LAPの上面に溜まった造影剤は、嚥下動作で舌が降下すると、それに伴い舌表面に落下します。

 ②落下して舌表面に貯留した造影剤は、嚥下運動により舌根部へと送り出されます。

 ③この一連の動作によって、少しづつ造影剤が嚥下されて行きます。

 

 最終的には、ケースⅡと比較すると、造影剤の口腔内貯留がかなり少なくなっていることが分かります。嚥下補助装置(LAP)の効果が顕著に認められます。

 しかしLAPの上面には、まだ造影剤が残っていることが分かります。

これらも何度も嚥下動作を行ううちに徐々に少なくなることが観察されます。舌先があればLAP上の造影剤を落とすことができるのですが、舌がそこまで届かないので、原理的には無理です。

  しかし頬の動きなども手伝って、口腔内の流れが舌根方向に向かうので、徐々にLAPの上の造影剤も洗い流されます。

 舌切除患者の場合、嚥下動作を何度繰り返しても、舌表面に付着した食塊を除去することは難しい。したがって食後に口腔内を歯ブラシなどで清掃することが必須となります。